囚われの美女「アンドロメダ座」とアンドロメダ銀河

アンドロメダ座。
たいへんロマンチックな名前の星座ですよね。

ですが残念なことに明るい星が多いわけではないうえ、形もやや複雑な星座です。
なので実際の夜空で星をつないで全体像を把握するのはちょっと難しいかもしれません。
でも、手がかりになる部分はわかりやすいんですよ。

アンドロメダ座は、晩秋の夜空、おおむね夜の9時ごろにほぼ天頂あたり、つまり真上にきます。
秋の星座を探す見じるしは「秋の四辺形」でしたね。いま、南を向いてから真上を見上げたとします。
そうすると、秋の四辺形は、その時間帯なら、真上よりもほんの少し右下あたりで輝いています。
秋の四辺形は、空を駆ける天馬ペガサスの胴体にあたるんでしたよね。

で、以前もお話ししましたがペガスス座とアンドロメダ座はつながっています。
今のように見ている場合、つまり南を向いてから真上を見上げた場合、秋の四辺形はほぼ真っすぐに見えていますが、四角形の左上の角にある星はペガスス座ではなくアンドロメダ座に属していて、この星が鎖につながれたお姫様の顔にあたるんです。
ですから、秋の四辺形がわかれば、イコール、アンドロメダ姫の顔はもう見えている、ということですね。

この星は、「アルフェラッツ」とい言う名がつけられており、この名前はアラビア語で「馬」を意味する「アル=ファラス」が語源です。
さらに別名「シラー」は、やはりアラビア語で「へそ」意味する言葉に由来するそうです。

実は、20世紀になるまでは、この星はペガスス座の星「でもあった」んです。
もともとそっちから付いた名前なんですね。
たしかに「馬」の「へそ」の位置にあるんです。
ですが、1つの星が2つの星座に属するのはまぎらわしいということで、1929年、国際天文連合の総会で、この星はアンドロメダ座の星であると定められました。

それならその時にもうちょっと女性っぽい名前に変えればよかったんじゃないの、と思わなくもないんですが。
実際、アンドロメダ座の他の星には、アラビア語で「腰布」とか「編み上げブーツ」といった意味の名前のついた星があるんです。
古くから呼ばれていた名前なので変えるわけにはいかなった、ということなんでしょうけれど、美しいお姫様の顔が馬のヘソでもあるという、ちょっとシュールな光景ではあります。

さて、この星から、つまり秋の四辺形の左上の角から「さらに左上に向かって」伸びていく星の列があるんです。
この部分を秋の四辺形と一緒にして考えると、ちょうど「とても大きな北斗七星」みたいな形になります。

このかたち、秋の夜空の中でけっこう目立っています。
それで、わが国では古来、四辺形の部分を、お米やなんかを測るマスに見立てて、「枡形星(ますがたぼし)」と呼び、左上に伸びていく部分を「斗掻き(とかき)星」と呼びました。

「斗掻き」とはなにかというと、マスに盛ったお米をたいらにならすために使う棒のことで、あの、計量スプーンできっちり測るための、すりきり棒っていうのがありますよね、あれと同じです。
ちょうどマスをすりきりながら測っているように見えるというのでこの名があります。

斗掻き星は、一等星ほどは明るくないんですが、そこそこに明るい星でできています。
なので、住宅地くらいの空なら、けっこう見えるんです。
ちなみに、ぼくんちは、浜松の中心街から4キロぐらいの、まあ普通の住宅地ですが、よく晴れた夜であれば、この斗掻き星、見えますよ。ぜひご覧になってみてください。

で、この斗掻き星がアンドロメダ座を形作る星たちの一部になるんです。
ただ残念ながら、その他の星はあまり明るくありません。
なので、星座の全体をとらえるのは、空のじゅうぶん暗い場所でないと難しいです。

そういう空の暗い場所であれば、秋の四辺形の角から、斗掻き星と枝分かれすようなかんじに、ちょっと細めのVの字、もしくはAの字を横倒しにしたような形に見える星の列があります。
ここがアンドロメダ姫のボディラインにあたります。

そして、その周りの星を繋いでいくと手足になりまして、両手を鎖でつながれた、囚われの美女の姿が浮かび上がってきます。


これがアンドロメダ座。意外に面積の広い星座なんですよ。

←アンドロメダ座の探し方
(gifアニメーション)

星座に描かれている人物中、最も有名なキャラクターの一人といっていいでしょう、囚われの美女アンドロメダ姫。

彼女の登場する神話は、秋の星座が大集合する物語ですので、もうすこし登場人物が増えてからお届けするとして、今回は、「アンドロメダ銀河」についてお話しましょう。

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