風薫る5月。夏も近づく5月です。
立夏も過ぎてまさしく初夏を迎えたところ。気持ちのいい風を感じる季節ですよね。
ところで「風薫る」とはいったい「何が」薫るのでしょうか?
もともとは漢語で「薫風(くんぷう)」という言葉があったのだそうです。
これを訓読みして、やまとことばに置き換えたものと言われています。
もともとの「薫風」は花の香りを運ぶ春の風を指すことが多かったようです。
それが次第に、初夏の風をあらわすように変化してきたんです。
ですから、現在の意味では、これは「若葉の香り」ということになるわけですね。
若葉といえば「新緑」という言葉がすぐ浮かびます。
目にもまぶしい、木々の緑。
この「みどり」という言葉も語感がいいですよね。
「みどり」という言葉は平安時代ごろから使われるようになったものだそうです。
でもじつは、みどりって「色」をあらわす言葉ではなかったんです。
「みどり」は本来は草木の若い芽=新芽を指す言葉でした。
それが、次第に「その色」を意味するようになっていったんです。
だから、今の時期の緑は、まさに本来の意味のとおりの「みどり」なんですね。
じつは「みどり」本来の意味での使い方は今でも残っています。
たとえば黒いのに「みどりの黒髪」といいいます。
赤ちゃんなのに「みどり児」といったりします。
これは色を意味しているのではありません。
「若い芽のように生まれたて」
あるいは
「新しい」「若々しい」「みずみずしい」
という意味なんです。
ただし、じつはこの言葉の成り立ちには二通りの説があります。
ひとは、これまでお話してきたように、新芽のことを「みどり」と呼んだのが先で、そこから新しいとかみずみずしいという意味が生じたという説。
もうひとつは、そもそも新しいとかみずみずしいという意味で「みどり」といい、そこから新芽をみどりと呼ぶようになった、という説。
この二つの説のどちらを採るか、悩ましいところなんですが、さらに、よくよく考えてみると…
さっき「新緑」っていいましたよね。
つまり「あたらしいみどり」。
これって本来の意味から考えると、新しい新芽、とか、新しい新しさ、っていうような、つまり重複表現になってしまうことになっちゃうのかもしれませんねえ。
さらには、つい「みずみずしい新緑の緑が」なんて言ってしまいがちですが、こうなるともういくつ重なってしまうやら(^-^;
…てなぐあいに、思いは千々に乱れて悩みは深まるばかり。
頭の中は5月の風の清々しさからかけ離れていくいっぽうなのでありました。
コトバって難しいですねえ。
なにはともあれ、夏に向っていく気持ちの良い季節です。
たっぷり味わっていきたいですね。
- テーマ:風薫る/新緑
- 「風薫る」はもともと漢語の「薫風」を訓読みにしたもの。
- 「薫風」は花の香を運ぶ風の意味だった→後に初夏を意味するようになった。
- 若葉といえば「新緑」→「みどり」は平安時代からの言葉
- 「みどり」は「色」ではなく草木の若い芽=新芽を指す言葉だった。
- 転じて「生まれたて」「新しい」「若々しい」「みずみずしい」の意味にも。(現代でも「みどりの黒髪」「みどり児」など)
- だとすると、「新緑」=「新しい新芽」になってしまう??