英雄「ヘラクレス」の星座は「ヘルクレス座」。探してみましょう!

『ライオンのフードを纏ったヘラクレス』

『ライオンのフードを纏ったヘラクレス』
“Heracles With Lion Hood” by edenpictures is licensed with CC BY 2.0.

ギリシャ神話きっての英雄ヘラクレスは、神々の王ゼウスの血を引く若者です。
母親はアルクメーネーという女性でした。
じつはこのアルクメーネー、メデューサの首や王女アンドロメダの物語で有名な、ペルセウスの孫娘にあたるんです。そんな血筋ですから、そりゃ強いですよね。

さて、ゼウスのお妃であるヘラは、夫と他の女性との間に生まれたヘラクレスが憎らしくてたまりません。
いっそ殺してしまえというんで、産まれて間もないヘラクレスのもとに毒蛇を送り込みます。
ところが赤ん坊ヘラクレスくん、生まれついての怪力で、その蛇をつかんで握りつぶしてしまったといいます。

『ヘラクレスと二匹の蛇の像』

『ヘラクレスと二匹の蛇の像』
Capitoline Museums, Public domain, via Wikimedia Commons

やがて立派に成長したヘラクレスはギリシャで並ぶもののない力持ちとなりました。
結婚し、3人の子供をもうけ、幸せにくらします。
しかしながら、いつになっても怒りのおさまらないヘラは、ヘラクレスに恐ろしい呪いをかけました。
その呪いによってヘラクレスはある日突然錯乱を起こし、最愛の妻と子を炎のなかに投げ込んでしまったんです。

『荒ぶるヘラクレス』

『荒ぶるヘラクレス』
Alessandro Turchi (gen. L’Orbetto), Der rasende Herkules, um 1620, Bayerische Staatsgemäldesammlungen – Alte Pinakothek München

正気に戻ったヘラクレスは、この罪を償うため、アポロンの神殿に詣でて神託を伺いました。
くだったお告げは、「ミュケナイの王に仕えて、10の勤めを果たせ」というものでした。

ヘラクレスはこれに従い、ミュケナイの国へ赴きます。
ヘラクレスの親戚筋にあたるこの王さま、ヘラクレスのあまりの強さに、自分の王位を奪われるのではないかと疑心暗鬼にかられます。
そこで、いかにヘラクレスといえども無事に戻れるはずはないと思うような難題ばかり命じたました。

一説には、女神へラがこの王さまに入れ知恵をしていたのだともいいます。

10のつとめのはずが、2つは難癖をつけられてカウントしてもらえず、結局ヘラクレスは、12の危険な冒険に挑まなければなりませんでした。

「ヘラクレスの冒険」のモザイク画(3世紀)

「ヘラクレスの冒険」のモザイク画(3世紀)
“Mosaic with the Labors of Hercules, 3rd century AD, found in Lliria (Valencia), National Archaeological Museum of Spain, Madrid” by Following Hadrian is licensed under CC BY-SA 2.0

この冒険には、後に星座になったキャラクターがいろいろ出てきます。
とくに、初期の冒険でヘラクレスに退治された怪物たち、しし座、かに座、それからうみへび座。
こうした星座たちは、みな春の星座になっていて、初夏の星座であるヘラクレスが東の空からのぼってくると、逃げるようにして西の空へ沈んでいく、というわけなんです。

このヘラクレスの12の冒険、もしも興味をおもちいただいたら、ぜひ、ギリシャ神話をひもといてみてください。

およそ十年の月日をかけて、ヘラクレスは全ての冒険を成し遂げます。
罪をつぐない自由の身になったヘラクレスは、デーアネイラという女性と再婚し、息子も得て、平穏な日々が訪れました。

さて、とある旅の途中で、家族とともに川を渡ろうとしたヘラクレス。
ヘラクレスは息子を担いで自力で渡り、妻のデーアネイラは渡し守に頼みました。
その渡し守は、ケンタウロス族の一人でした。ケンタウロスとは、体の半分が人間、半分が馬の姿をした一族です。
なんとそのケンタウロスは、美しいデーアネイラを見て邪な心をおこし、彼女をさらっていこうとするんです。

『誘拐されるデイアネイラ』

『誘拐されるデイアネイラ』
“The Abduction of Deianira” by William Hamilton, The Elisha Whittelsey Collection, The Elisha Whittelsey Fund, 2015, Public domain, via The Metropolitan Museum of Art

これに気づいたヘラクレスは、すぐさま矢を放ってケンタウロスを倒します。
このとき、そのケンタウロスはデーアネイラにこんなことを言い残すんです。

「おれの血をとっておくがいい。この血には愛情を取り戻す力がある。いつか役に立つ時が来るだろう」

これはとんでもない嘘で、じつはその血は肉体を焼き焦がす猛毒だったのですが、そんなこととはつゆ知らず、デーアネイラはその血を大切にしまっておきました。

のちになって、ヘラクレスが別の女性に心を移しかけたとき…
一説には、デーアネイラの疑心暗鬼だった、ともいうんですが、ともあれ、彼女は夫の愛を取り戻すために、「愛の妙薬」と信じていたこの血を下着に染み込ませてヘラクレスに送ります。

ヘラクレスがその下着を身に着けると、たちまち猛毒が回って体中が焼けただれます。
下着はヘラクレスの体を締め付け、剥がそうとすると皮膚も全部はがれてしまいました。
神の血を引いて半ば不死身であったヘラクレスは、死ぬことができない苦しみを味わいます。

『ヘラクレスの死』

『ヘラクレスの死』
Muerte de Hércules” by Francisco de Zurbarán, Public domain, via Wikimedia Commons

あまりの苦痛に耐えかねたヘラクレスは、体が無くなれば痛みも消えるだろうと、薪を積んでその上に横たわり,肉体を燃やすことにしました。
炎に焼かれることで、ヘラクレスはようやく苦痛から逃れることができました。

そのとき、稲妻がひかり雷鳴がとどろき、空から4頭立ての馬車が現れて、彼を天に運んでいきました。
その馬車はゼウスが使わしたものでした。
こうしてヘラクレスは神の仲間入りをして、その姿は星座になった、といわれます。

『神格化されたヘラクレス』

『神格化されたヘラクレス』
“Story of Hercules – The Apotheosis of Hercules” by Noël Coypel, Public domain, via Wikimedia Common

愛する者を殺した罪をつぐなうために危険な冒険を果たし、そののち、愛の薬と信じて使われた毒によって命を失った、英雄ヘラクレスの物語。


いかがでしょう、そんなお話を思い浮かべながら、晴れた夜には、夜空をみあげてみませんか。

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