さて、昨日、見事打ち上げ、そして予定の軌道への投入に成功した、小惑星探査機「はやぶさ2」。今日はその話題にちなんで、小惑星とはなにか、そして、普段はなかなかお話できない日本の神話から、オオクニヌシとスサノヲの物語をご紹介します。
昨日のロケット打ち上げの様子、ぼくはネットのニュースサイトで動画を何度も見てしまいました。
2010年6月に、小惑星イトカワから、トラブルを乗り越えて地球への帰還を果たして、世界で初めて小惑星の微粒子を持ち帰った、あの「はやぶさ」の後継機として、小惑星「1999JU3(いちきゅうきゅうきゅう・じぇーゆー・さん、と読むようです)」を目指して往復6年間にわたる宇宙の旅に出た「はやぶさ2」。
今日はまず、小惑星とはなにか、からお話していきます。 そもそもの始まりは、1801年1月1日、19世紀が始まった日、シチリア島にある天文台で発見されて、シチリア島の女神にちなんでケレス(もしくはセレス)と名づけられた星です。
この星は、火星と木星のあいだにあって太陽を回る軌道を描いていることから、当時は新しい「惑星」とみなされていました。
が、その直後から、近くの軌道に同じような天体が続々と見つかるようになったこと、惑星にしては小さすぎる(なにしろ大きなサイズをもつケレスでさえ直径が月の1/4ほどしかありません)ことなどから、1850年頃から「小惑星」として惑星とは区別されるようになりました。
やがて、木星軌道と火星軌道の間に、たくさんの小さな天体があることがわかり、この領域を「小惑星帯」と呼ぶようになりました。
現在では何十万もの小惑星が発見されており、その総数は数十万ないし数百万もあると推定されています。
この小惑星の正体はなにか。当初は、火星と木星のあいだにかつて存在した惑星が何らかの原因で破壊されて作られた、という説が唱えられていましたが、この説は現在は支持されていません。
現在では、一部に元は彗星(ほうき星)であったものが含まれるほかは、惑星になれなかった原始太陽系のガスや塵でできていると考えられています。
太陽系の様々な惑星は、太陽ができた後に残ったガスや塵が、互いの重力で衝突・合体を繰り返して成長を続けた結果できあがったと考えられているのですが、なぜ小惑星は惑星になれなかったのかというと、まず第一に、この小惑星帯のあるあたりは、ガスや塵の成分が少なかったこと。
もう1つの理由は、木星が先に形成されたこと。
巨大な木星が及ぼす重力によってこの近辺の軌道が乱されて、惑星のタマゴが大きな惑星に育つことができなかったと考えられています。
今「惑星のタマゴ」と言いました。そう、小惑星は原始の太陽系で惑星が作られていった頃の状態を今も保っている存在なんです。
したがって、小惑星からサンプルを持ち帰ることで「惑星のもとになった材料がどんなものであったか」「惑星が誕生するころの太陽系内の様子がどうであったのか」さらには、「生命の起源」についての手がかりを得ることが期待できるというわけなんです。
ところで、「はやぶさ」が探査した小惑星は「イトカワ」という名前でしたが、今度の小惑星は「1999JU3」といいます。この「1999 JU3」というのは、小惑星が発見された際に与えられる仮の符号です(ちなみに1999は発見された年です)。ということはまだ名前がついていないんです。
この小惑星を発見したのはアメリカのマサチューセッツ工科大学の「LINEARプロジェクト」という小惑星を観測しているプロジェクトです。
小惑星は発見者に命名権がありますから、名前を決めるのはその研究グループです。 じつは「イトカワ」も、発見したのは同じ研究グループです。
この名前は、2003年5月に「はやぶさ」の打ち上げが成功したあとで、日本のロケット開発の父・糸川英夫博士にちなんだ名前をつけてくれるよう日本から依頼したものだったんです。 ということは、今回も、JAXAから依頼することになりそうなんですね。
いったいどんな名前になるのか、公募も含め名前の案の決め方を検討している、とのことですから、また何らかの発表があることと思います。
歴史に残る探査に挑 む小惑星がどんな名前になるか、楽しみですね。
小惑星の名前は、当初、他太陽系内の天体と同じように、ギリシャ・ローマ神話の神の名前からつけられていたんですが、やがてたくさん見つかるようになると、他の神話や民間伝承に登場する神や妖精、文学作品の登場人物、あるいは実在の人物や地名なども使われるようになりました(イトカワもそうですね)。
なものですから、ふだん、星座のお話をしていると、基本、ギリシャ神話をご紹介することになるのですが、小惑星の中には、日本の神話から名前が取られているものもあるんです。
たとえば、国生み神話で名高いイザナギ・イザナミ。月の神であるツクヨミ、太陽の神アマテラス、あるいは、サッカー日本代表のエンブレムでお馴染みの八咫烏。そして、「ヤマタノオロチ退治」のスサノヲ、「因幡の白兎」のオオクニヌシ、などなど、けっこうたくさんあるんですよ。
そこで今日は「スサノヲのもとを訪れたオオクニヌシ」の物語をご紹介します。