オリオン座の探し方と神話〜リゲルとベテルギウス(爆発する?)、アルテミスとの恋物語。

さて、オリオン座にまつわる物語です。
ギリシア神話では,オリオンは海の神ポセイドンの息子であるとされています。
逞しく凛々しい美青年で狩りの名手、そして、ポセイドンから水の上を歩く力を与えられて、海でも川でも陸上と同じように歩くことができたといいます。
ただ、先日の「すばる」の回でもちょっとお話しましたけれど、女好き、という面もあったようです。

オリオンが星座になったいきさつについては、実はたくさんのストーリーがあります。
おそらくいちばん有名なのは、さそり座にまつわる物語でしょう。

オリオンはギリシャ随一の狩人として名声がとどろいていたんですが、そのことに思い上がってしまい、この世に自分にかなうものなどいるものか、などと自慢してしまいます。
これが神の怒りに触れて、オリオンをいましめるために、さそりが放たれます。
その毒針でオリオンは命を落としてしまうことになります。

その後、両者ともに天にあげられて星座となりました。
オリオンは冬の間、空高いところで威張っているんですが、さそりが東の空から上る季節になるとこそこそと西の空に沈んでしまう、とされています。

オリオン座とさそり座はほぼ180度離れているので、決して同時には空にいない、このことをうまく利用したお話です。
とても有名ですから、お聞きになったこと、あると思います。

今日はもうひとつ、オリオンとアルテミスの物語をご紹介します。

さきほど言ったように、ちょいとばかり、というかかなり女好きのきらいがあったオリオン。
あるとき、暁の女神エオースと恋愛関係になりました。

エオースの仕事は夜明けを告げることなんですが、オリオンに早く会いたいあまり、仕事を早々に切り上げるようになってしまいます。
夜明けの時間がやけに早くなったことを不審におもったのが、月と狩の女神アルテミス。
彼女はエオースの宮殿に様子を見にやってきます。
そこでオリオンとアルテミスは運命的な出会いをするんです。

ギリシア随一の狩人オリオンと狩りの女神でもあるアルテミス。
ふたりが恋に落ちるのに時間はかかりませんでした。


「ダイアナ(アルテミス)と狩人」

「ダイアナ(アルテミス)と狩人」
Diana en de jager, Jacques Bellange, 1602 – 1616, Public domain, via The Rijksmuseum (the national museum of the Netherlands)

 

しかしながら、アルテミスは、純潔を司る女神でもあります。
その勤めを果たすため、彼女は父である神々の王ゼウスに、永遠の乙女であることを誓っているんです。
ですからこれまで、アルテミスは男性を近づけることはいっさいありませんでした。
そんなアルテミスの初めての恋を苦々しく思っていたのが、アルテミスの兄、アポロンです。

アポロンは、乱暴者で女好きでもあるオリオンを気に入らなかった、という理由もありますが、それに加えて、恋愛が許されないはずのアルテミスがゼウスへの誓いを破るのを恐れたんです。

アポロンは何度もアルテミスを説得しましたが、彼女はどうしても聞き入れません。
いたしかたなく、アポロンは、二人の恋を終わらせるべく、策略をめぐらせたのです。

ある日のこと、アポロンはアルテミスを海岸に呼び出しました。
そして、海の彼方に見える小さな点を指差して、こう言います。

「いくらお前が弓の名手と言っても、
あの水平線に浮かんでいる小さなものを
ここから射抜くことなど出来はしないだろう。」


アルテミスを挑発するアポロン(「Orion gedood door Apollo」より)

アルテミスを挑発するアポロン(「Orion gedood door Apollo」より)
Orion gedood door Apollo, Etienne Delaune, 1547 – 1548, Public domain, via The Rijksmuseum (the national museum of the Netherlands)

 

それを聞いたアルテミスは、すぐさま持っていた弓を構えて、勢いよく矢を放ちました。
狩りの女神が、狙った的を逃すはずがありません。
その小さな点は波間に消えていきました。

ところが、翌日海岸に打ち上げられたのは、アルテミスの矢に打ち抜かれたオリオンだったのです。
オリオンは海の上を歩く力を持っていた、と言いましたよね。
アポロンは、遠くに見えているのが、海の上を歩いているオリオンだと知ったうえで、アルテミスをそそのかしたんです。

愛する人を自らの手で殺してしまったアルテミスは、神としての仕事を忘れてしまうほど悲しみました。
彼女は、死者も蘇らせるという名医アスクレピオスのもとを訪ねて、オリオンを生き返らせてくれるよう頼みますが、それもかないません。
アルテミスは最後に、ゼウスのもとを訪れ、せめてオリオンを空に上げてください、と願います。
そうすれば自分が夜空を行く時、会うことができますから…と言うんですね。

不憫に思ったゼウスはこれを聞き入れ、オリオンを天に上げて星座にしました。
それ以来アルテミスは、銀の月の馬車に乗って、愛するオリオンに会うため夜ごと空を巡っているのだといいます。
オリオンもまた、アルテミスがやってくるのを楽しみに待っているとされています。


夜空にあるアルテミス

夜空にあるアルテミス
“Diana as Personification of the Night” Anton Raphael Mengs, Public domain, via Wikimedia Commons

 

ただし…。常に月がオリオン座の近くにあるとは限りません。
月は日毎に星々の中での位置を変えていきます。

例えば今夜、オリオンと月はだいぶ近づいてきていますが、まだちょっと離れてます。
これからさらに近づいていって、来週のはじめごろには、仲良く天を行く二人の姿が見られますよ。
そしてその後はまた次第に離れていき、次に寄り添うのはおよそひと月後。
つまり、月に一度の逢瀬ともいえます。せっかくの逢瀬、空が晴れているといいですね。

狩人オリオンと、月と狩りの女神アルテミスの、悲しい恋物語。
いかがでしょう。そんなお話を思い浮かべながら、晴れた夜には、星をみあげてみませんか。

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