今日は、夜空を駆ける猟犬、おおいぬ座についてのお話です。
おおいぬ座は、たいへん見つけやすい星座です。
なにしろ、とっても明るい星、全天で1番明るい星がある星座なんです。
その星の名は、シリウス。
冬の夜空を見上げて、とにかくいちばん明るい星を見つければ、それがシリウスで、そこがおおいぬ座、というわけ…なんですが、とはいうもののやっぱり何か目印があったほうがいいですよね。
目印になるのは、いつものようにオリオン座です。
オリオンの三つ星。まんなかに三つななめに並んでいる星です。
この三つ星を右の方に伸ばしていくと、おうし座のアルデバランやすばるがあるんでしたね。
今日はこの三つ星を、左に伸ばしていきます。
そうすると、ちょうどアルデバランの反対側のあたりに、青白く輝くひときわ明る星がみつかります。
これがシリウスです。
とにかく本当に目立つ星ですから、いちど見つけておけば、次からはすぐ分かるようになりますよ。
ちなみに、シリウスが見つかったら、その左上に視線を移してみます。
そうすると、シリウスほどではありませんが、かなり明るい星があります。
これもすぐ見つかります。これが、こいぬ座のプロキオンという星。
こいぬ座についてはまたあらためてご紹介しますが、この、シリウスとプロキオン、そしてオリオンの左上の角の星、爆発するかも、というので話題になったベテルギウス。
この3つの星をつなぐと、ほぼ正三角形に近いかたちになります。
これを「冬の大三角」といいます。
この三角形も形が整っていてきれいですから、よかったら探してみてください。
さて、今の時期、おおいぬ座は、頭を上にして、後ろ足で立っているような角度で空に上ってきます。
シリウスがわかりましたら、シリウスのすぐ左側に星が二つ、ちょんちょんと縦に並んでいます。
これを結んでできる小さな三角形がわんちゃんの顔になります。
シリウスがちょうど鼻のあたまに当たります。
顔の見当がついたら、あとは下に向かって胴体や足をつなげていきます。
街中で全体像を掴むのは難しいと思いますが、周りに明かりが少なくて星がよく見えるところに行く機会があったら、ぜひ探してみてください。
ちょっとびっくりするほど犬らしく見えるんですよ。
なんだか、わんちゃんの表情を思い浮かべてしまうほど、とても形の整った星座です。
(gifアニメーション)クリックで拡大します。
さて、シリウスに話を戻します。
この星がなぜこんなにも明るく輝いているかというと、太陽の14倍の光を放っているということがひとつ。
ハッブル宇宙望遠鏡で撮影したシリウス
Sirius taken by the Hubble Space Telescope. NASA, ESA, H. Bond (STScI), and M. Barstow (University of Leicester), Public domain, via Wikimedia Commons
そしてもうひとつ、シリウスは太陽から近い星なんです。
8.6光年といいますから、もちろん実際には大変な距離ですけれども、宇宙のなかで考えると、もうお隣さんといってもいいくらいの星なんですね。
なので、SF作品などにはよく、未来の人類の植民地として登場することもあります。
シリウスという名前は「焼き焦がすもの」という意味のギリシャ語から来ています。
シリウスは冬の夜空で目立つ星ですが、夏になると、明け方に太陽とともにのぼってきます。
(もちろん、すぐ明るくなって見えなくなります)
そのため、ギリシャでは、夏の暑さは「シリウスが太陽と一緒になって空から地上を焼き焦がしているのだ」と考えられていたんだそうです。
また、この星は、古代エジプトでは、非常な重要な星とされていました。
エジプトでは、シリウスが日の出の直前に東の空に上ってくるころが夏至にあたり、この季節になると毎年ナイル川が氾濫しました。
ナイル川の氾濫は、もちろん洪水の被害もあるんですが、同時に、上流から肥沃な土を運んできてくれる、これが農耕のためにたいへん重要なことだったんです。
つまりシリウスは「ナイルの氾濫を知らせてくれる星」として崇められていたんです。
なにしろ当時のエジプトの暦ではこの日が元日とされていたというくらいですから、いかに重要だったかがわかりますよね。
ちなみに、おとなりの中国では、シリウスは「天狼星」天の狼の星、と呼ばれています。
天をかける狼の、するどく輝く瞳ということなんですね。
「天狼星」カッコいい名前ですよねえ。
では、いつものようにおおいぬ座にまつわる物語をご紹介していきましょう。