今日は、去り行く冬の星座たちの中から、あまり目立たないけど印象的な星座を二つ、うさぎ座、そしてはと座についてのお話です。
その前に、今現在の星空について。
もうずいぶん暖かくなってきまして、夜も次第にしのぎやすくなっていきます。しかしながら、星空のほうはちょっと見づらくなってくるのがこの季節でもあります。
気候が変わりやすくて、曇りの日も多くなりますし、また、晴れてはいても、ちょっとかすんだような空になってくるころです。
さらに、にぎやかだった冬の星座たちがだんだん西にかたむいていって、星空自体もちょっと寂しい感じになってくる季節でもあります。
ですが、ちょうどいまごろ「3月下旬」というのは、冬の星座がまだ沈みきっていないで、同時に春の一等星も見えているという、明るい星がとってもたくさん見られる時期でもあるんですよ。
たとえば今、夜の9時頃ですと、冬の星座に含まれる7つの一等星が全部見えています。
おうし座のアルデバラン
ぎょしゃ座のカペラ
オリオン座のベテルギウスとリゲル
おおいぬ座のシリウス
こいぬ座のプロキオン
ふたご座のポルックス
この7つです。で、そこに、春の星座の一等星、
しし座のレグルス
おとめ座のスピカ
うしかい座のアークトゥルス
この3つが東の空で加わってきて、10個の一等星が見えているんです。
一等星というのは全部で21個しかありません。そのうちの10個が同時に見えているんですねえ。
さらに今年は、ふたご座の中に木星が、そしておとめ座の中に火星があって明るく輝いていますから、これはそうとうに壮観ですよ。
さきほど、今なら夜の9時頃といいいましたけど、この状態で見える時間帯はだんだん早くなっていきます。
たとえば今月の末頃なら8時頃、4月の半ばなら7時頃。4月の半ばごろ、7時頃ってまだ真っ暗になってないのでかなり見えにくくなってきます。
見える時間帯が早くなっていくということは、同じ時間に見ているとすると、だんだん西に移動していくということです。
そんなふうにして、やがて冬の一等星たちは、暗くなった頃には西の地平に沈んでしまって見えなくなっていきます。
見えているのはあと一ヶ月弱ってとこでしょうか。
晴れた夜には、ぜひ空を見上げてみてください。
さて、そんな、しだいに西に沈んでいこうとしている冬の星座から、今日は南の空、低いところにある星座を二つご紹介します。
まずは、オリオンの足下でうずくまる「うさぎ座」。
この星座はとても均整の取れた形をしていて、見つけやすくて覚えやすい星座です。街明かりのあるところではちょっと難しいかもしれませんが、空がそこそこに暗い場所であれば意外に目立つ星座なんです。
このウサギは、オリオンのすぐ下にいます。目印は「オリオンの剣」です。
オリオン座の中心で横に並ぶ3つの星。オリオンが腰に巻いているベルトですね、このベルトから、下に向かって連なっている3つの星。これがオリオンの剣です。
この剣をまっすぐ下にのばしていきます。そうしますと、小さな台形がふたつ横に並んでくっついているような形がみつかります。ここがうさぎ座の中心部分。
右側の台形が顔と前足になって、2つの長い耳が伸びています、左がわの台形が後ろ足としっぽになります。 星をつないでみるとほんとにウサギに見えるんです。
一度見つけると思わず「なるほど、ウサギだ!」と唸っちゃうくらいです。
←うさぎ座の探し方
(gifアニメーション/クリックで拡大)
この「うさぎ座」はたいへん古くから知られていた星座です。
紀元前3世紀ごろの吟遊詩人の詩にも登場しているほどなんです。
それほど古い星座なのにもかかわらず、このウサギがなぜ星座になったのか、という神話は特に残っていないんです。
ウサギというのはオリオンが好んで追った獲物だったので、それが足元に置かれたのだろうと言われてはいるんですが、歴史の古さから考えると、個別の神話がないのはちょっと珍しいことですね。
にしても、このウサギ、上からはオリオンに踏みつけられそうになっていて、左隣はおおいぬ座ですから、背後は猟犬に狙われていてる、でもって、右側つまり目の前にある星座は「エリダヌス座」といって、これ、川が星座になったものなんです。
つまり進路も川にはばまれているという、もう万事休すといったかんじの気の毒なウサギくんなんです。
ただ、こんな伝説が伝わっています。
オリオンに追いつめられて、もはやなすすべもなく、その場にうずくまってしまったウサギ。オリオンは情け容赦なく踏みつぶそうと、足を高々と上げました。
・・そこへ、どこからともなく、真っ白な鳩が飛んできてオリオンの前を横切りました。それを見たオリオンは、静かに足をおろしました。
そしてウサギは難を逃れる事ができた、というんです。
このときの鳩、ではないんですが、うさぎ座のすぐそばにあるのが、今日ご紹介するもうひとつの星座、はと座です。では、はと座についてお話していきましょう。