ケフェウス座とカシオペヤ座、そして古代エチオピア王家の物語

今週は、北の夜空にうかぶ王様とそのお妃、ケフェウス座とカシオペヤ座、二つの星座をご紹介しました。

ふだん、原則として星座をひとつずつご紹介していますが、今言ったように、この二つの星座は、王様とそのお妃として、空のなかでも隣どうしになっていますので、一緒に探しすのがいいと思います。
で、この王様とお妃、どっちが目立っていて、有名かというと、これはもう圧倒的にお妃のカシオペヤのほうなんですね。
というわけで、まずはカシオペヤ座から見ていきましょう。

カシオペヤ座は、実はほぼ一年中北の空に見えています。
ですが、春から夏は低いところにあるためちょっと目立ちません。
秋から冬にかけて、空の高いところにのぼってきますので、いまがとても見つけやすくなっているんです。

今の時期は、夜8時ごろ、ほぼ真北の空、高いところで輝いています。
大変有名な星座ですから、ご存知の方、多いと思います。
アルファベットのWまたはMの字を形づくる5つの星。
WまたはMというのは、ようするに向きによるんです。
季節や時間帯によって、見え方が上下逆さまになるんです。
今の季節には、Mの字をさがすつもりで見上げるのがいいですよ。

1等星こそありませんが、2等星や3等星の比較的明るい星でできていて、かたちもまとまっていますから、よく目立つ星座です。

北極星を探すための星座としても知られていますね。
「M」の字の両わきの線を上にのばして、線と線がぶつかったところから、「M」のまん中の星をとおって、5倍にのばすと、「北極星」にたどりつきます。

北極星の見つけかた

この「WまたはM」のかたちはたいへん目立ちますから、非常に古い時代から注目されていた星座です。

日本ではMに見える時を「やまがた星」、Wに見える時を船の錨にみたてて「いかり星」と呼んでいました。
また、アラビアではラクダが足を折り曲げてしゃがんでいる姿、もしくはふたこぶらくだの背中が連想されて、ラクダ星と呼ばれていたんだそうです。
所変われば、というわけですね。

さ、ではつぎにケフェウス座です。

この星座も一年中空にいる星座で、カシオペヤ座とおなじように、秋から冬にかけて高いところにのぼってきて見やすくなります。
ただ、こちらは暗い星が多くてあまり目立たない星座です。
なので、市街地で見つけるのはちょっと無理です。
空の暗い場所で見ると、さっき言った、カシオペヤ座から北極星に至る線。
この線のまんなかあたりの少し左側に、先端のとがった五角形といいますか、とんがり屋根の家を横にしたみたいなかたちに並んでいる星があるんです。
これがケフェウス座です。

カシオペヤ座とケフェウス座

明るい星はありませんが、形がとても分かりやすいので、空がじゅうぶん暗い場所でさえあれば、見つけるのはさほど難しくない星座です。

←探し方gifアニメーション
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さてこの星座には、非常に重要な星があります。
それは「ケフェウス座デルタ星」といいます。
デルタっていうのはギリシャ語のアルファベット。
星の呼び方の規則で、星座の中で明るい順にギリシャ語のアルファベットが割り振られているんでしたね。
アルファ、ベータ、ガンマ、デルタですから、この星座の中で4番目に明るい星です。

この星は周期的に明るさが変わる変光星です。
先週お話したくじら座の「ミラ」も変光星でしたね。
変光星にはいろんなタイプがあるんですが、この星の場合は、この星座の名を取って「ケフェウス型変光星」と呼ばれるタイプの代表各とされているんです。

この「ケフェウス型変光星」というのはどんなタイプか、細かいことはややこしいので省略しますけれども、とにかく、その性質を利用すると、その星と地球との距離を精密に求めることができるんです。

そして、このタイプのなかには非常に明るいものもあって、ぼくたちの銀河系の外にある別の銀河のなかにあっても識別が可能なものもあるんです。
そういう星は、はるか遠くにある銀河までの距離を計る手がかりになります。

ケフェウス座デルタ星は、このタイプの変光星のなかで最初に発見されたものなんです。
いわば『宇宙のものさし』。
もしくは、明るさが変わるとこからすると、『宇宙の灯台』といえるかもしれませんね。
ですから、めだたないけれどじつは実力を秘めた王様、ではあるんですよ。

さて、ケフェウス座とカシオペヤ座、この二つの星座、星の並びはどちらもとても整っていて、見つけやすく覚えやすいんですが、いかんせん、どういう姿をあらわしているのか、というのが分かりにくいんです。

カシオペヤ座のほうは、王妃が椅子に座っているところ、もしくは、その椅子そのもの、といわれていまして、まあそういわれてみれば横から見た椅子に見えなくもない、とは思うんですが、ケフェウス座はですねえ。
両手をかるく広げて立つ王様の姿、とされているんですが、どこをどうつなぐとそういう絵になるのか、ぼく、いまだによくわからないんです。
まあ、WまたはMの字のかたちのカシオペヤ座、とんがり屋根の家のかたちのケフェウス座、と、覚えるのが現実的なのかもしれません。

では、星座にまつわる物語をご紹介していきましょう。

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