きたる鳥、かえる鳥【七十二候:玄鳥至/鴻雁北】

さて、二十四節気では「清明」まっただなか。
清らかで明るいとの文字どおり「万物が清々しく明るく美しいころ」という意味ですから、気持ちのいい陽気にさそわれてあちこちお出かけしたいところではあります。
が、残念ながらまだまだそういうわけにはいかないようで…。
事態の収束に向けて全員で力をあわせて乗り越えていきましょう。

さて、二十四節気を三分割したのが七十二候です。
七十二候ではいまどうなっているかというと、今日まで(例年4月9日ごろ)が「玄鳥至(つばめきたる)」つまり燕が南から渡ってくるころ。
そして明日から(例年4月10日ごろ)が「鴻雁北(こうがんかえる)」つまり雁や鴨のなかまが北へ帰っていくころ。
ちょっとおもしろい並びですよね。

秋にもそれぞれ、「玄鳥去(つばめさる)」「鴻雁来(こうがんきたる)」という、春と反対の意味を持つ候があります。
でも、この2つの間には3つの候がはさまっていて、20日ほど離れています。
ですが、春は隣あっているんです。
自然現象としてはほぼ重なっていると見てもよさそうですよね。

燕は春に南から渡ってきて夏を日本で過ごしたあと、越冬のために南に渡っていく。
いっぽう雁や鴨は北から日本に渡ってきて冬を越して、春になると北へ渡っていく。

前者を夏鳥、後者を冬鳥といいます。
繁殖や越冬のための、いってみれば快適な気候がそれぞれで相当に異なっているわけで、
なんだか不思議な気がします。

そうして、渡り鳥たちはたいへんな距離を移動するんですよね。
燕は日本から3,000kmから5,000kmほど南からやってきます。

数字じゃピンときませんから具体的に見ると、マレーシア、タイ、ベトナム、インドネシア、フィリピンといった、赤道に近いところから飛んでくるんです。
いっぽうの雁や鴨、こちらもおよそ4,000kmほど北の、シベリアや北極圏へ渡っていきます。

すごいですよねえ。
様々な渡り鳥たちが、それぞれが本当にものすごい距離を、この時期、全体としては大きく北へ北へと飛んでいて、それがちょうど日本では入れ替わるように見えるわけです。
自然のスケールの大きさにあらためて驚かされます。

燕については、気象庁が行っている「生物季節観測」(生物季節現象を目や耳で確かめて、現象の確認できた日を記録する観測)の対象になっていますから、
上記、気象庁のホームページで全国の「燕を初めて見た日」の観測状況を見ることができます。

渡り鳥たちは今年もきちんと春を告げてくれている。
そう考えるだけでも季節が実感できるような気がするし、世界地図をひろげて、長い長い距離を渡っていく渡り鳥たちを思い浮かべてみるのも、素敵な過ごしかたかもですよ。

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