ムーンイリュージョンとマヤ神話の月の女神イシュチェル

「天の光はすべて星」、今回はまず月の不思議な見え方について。

さてみなさん、こんな経験はありませんでしょうか。
ちょうど満月の日でなくてもその前後あたり、日が暮れてきた頃、ふと気がつくと、ものすごく大きな月が建物の向こうに顔を出していてびっくり、なんて…。

地平線から昇ってきたばかりの月は、普段よりも大きくて、すごく近くにあるように見えるんです。
でも、頭上たかく昇ってからはいつもどおりの大きさに感じます。

ご存知のように月は地球の周りを回っていまして、月と地球の距離は、厳密には常にぴったり一定ではありませんけれど、まあほぼ変わりません。じっさい、月が地平線近くにあるときと天高くにあるときとでは、物理的な距離はほとんど変わりません。

ですから当然、地球から見える大きさは変わらないはずってことになりますよね。
ですが、不思議なことに地平線近くにいる時には大きく見えます。

この現象は「ムーン・イリュージョン」と呼ばれています。なんだかロマンチックな名前ですよね。

この「ムーン・イリュージョン」、古代から現代まで、どうしてこうなるのか、解明が試みられてきていて、未だに明快な答えがでていないという不思議な現象なんだそうです。

現代科学の力をもってしても分からない謎というのは色々とありますが、中でもこの「ムーン・イリュージョン」は、解明が試みられてきた歴史の長さにおいてはかなりのもの。
なにしろ紀元前6世紀ごろの、バビロニア時代に、楔形文字でこの問題について書かれた文章が残されているくらいなんです。

ちなみに、かつては、大気の影響などでもって「拡大されて見えている」のだと考えられていたそうですが、月の見かけの大きさ自体は地平線近くでも空高くでも変化していないことがわかっています。

これまで、おおくの学者たち、名だたる天文学者や数学者、哲学者、心理学者たちがこの謎に挑んできました。一例を上げますと、アリストテレス、プトレマイオス、ダ・ヴィンチ、ケプラー、デカルト、ホイヘンス、ガウス、オイラーなど。そうそうたる名前ばかりですよね。

これまで考えられてきた理由のなかでは、たとえば「そばに見える建物などとの対比で大きく見える」という説があります。

地平線近くにある月は、建物や山や木々など、手がかりになる物体が近くに存在していて、それらと比較しながら見ることになります。
そうしたものと比べると月は「けっこう大きく」見えるため、脳の中で「大きい」という印象が色濃く残ります。

一方、月が天高く上っている場合にはそういった手がかりになるものはなく、空の中にポツンとあるだけ。雲があったりはするけど、雲の実際の大きさなんてわかりませんからね、くらべようがないわけです。
なのでそれほど大きいという印象は残らない。

こういう、つまりは目の錯覚なんだ、という説ですね。

「ムーン・イリュージョン」の原因は、このように人間の目の錯覚によるものだとする説が有力です。
とはいうものの、これも「決定的な理由」にはならないようなんですね。

このほかにも、瞳孔の開き具合によるものだとする説、あるいは『上を見るときには眼球の水晶体が薄くのびるためである』なんて説もあるんですが、いずれにせよ、明確に立証されてはおらず、ほんとうのことはまだわかっていないんだそうです。

満月の時期には、ぜひ、のぼってくるころの時間帯、チェックしてみてください。

ちなみに、うえのほうで「月の見かけ上の大きさ自体は変化していない」と書きましたが、実際のところ、どのくらいの大きさに見えているのか?

今、お手元に五円玉、ありませんか?もしお持でしたらご覧になってみてください。五円玉、穴があいてますよね、その穴は、直径およそ5ミリ。
じつは、これが月の実際の見た目の大きさなんです。

五円玉を手に持って、腕をまっすぐ伸ばしてのぞいてみます。すると、月はすっぽり五円玉の穴の中に納まります。これ、やってみるとびっくりしますよー。次の満月、ぜひ試してみてください(^_-)b

さて、ではいつものように、月にまつわる物語。今日はいつものギリシャ神話ではなく、マヤ文明につたわるお話をご紹介します。

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