はくちょう座〜夏の大三角、北十字、アルビレオそしてパエトーン

今日は、夏の夜空に翼を広げる、はくちょう座についてのお話です。

はくちょう座は、とても形が整っていて美しい星座です。
比較的明るい星も多いですから、夜空の明るい市街地ちかくであっても、きっと見つけることができますよ。

探し方もかなり簡単です。夏の星座探しの目印になるのは、夏の大三角。
この大きな三角形が見つかれば、もうはくちょう座は見つかったも同然なんです。

ではさっそく、夏の大三角から見つけていきましょう。

今の時期、夏の大三角はほぼ天頂、つまり空の真上ちかくにきています。
夜の8〜9時前後、真上を見上げると、とっても明るい星が三つ、大きな三角形をつくっているのがすぐわかります。

まず、ひときわ目立つのが「こと座のベガ」、七夕の織姫の星です。
いま仮に、南を向いてから真上を見上げているとすると、ベガから見て左下のほうにあるのが「わし座のアルタイル」これが彦星です。

夏の大三角の、どの角がどの星なのかは、「長いほうの三角定規」に見立てるのが個人的におすすめの方法です。
厳密には直角三角形ではありませんが、ぱっと見、結構似ているんですよ。

そういう見たてをすると、三つの角のうち、直角の角にあたるのが、織り姫のベガ、長い角にあたるのが彦星のアルタイルです。

そして、今日お話するはくちょう座は残る一つの星が起点になります。
三角定規で言えば、直角でも、長い方でもない角、ここにあるのがデネブという星。
ここが、はくちょう座の基点です。

デネブとは、アラビア語で「尾」という意味、つまりここが白鳥の尾羽にあたります。
デネブから、夏の大三角の内側にむかって、白鳥の胴体が伸びています。
先端にある星が「アルビレオ」といって、ここが白鳥の「くちばし」にあたります。
そして、デネブの左右に、大きな翼がひろがっています。

はくちょう座の探し方
←はくちょう座の探し方
(gifアニメーション)クリックで拡大します。

夜空の暗いところであれば、夏の大三角の中を天の川がながれているのが見えるはず。
そして、天の川をバックに、長い首をまっすぐ伸ばして翼を広げて羽ばたく白鳥の姿。
ごく自然に想像できることと思います。
かたちも美しくて、たいへん印象的な星座です。

SENRYU – stock.adobe.com
https://stock.adobe.com/jp/contributor/207565904/senryu?load_type=author&prev_url=detail

また、夜空の明るい場所であっても、この星座のメインの部分…ここは十文字がたをしているんですが、夏の大三角の内側にのびる十文字、見分けることができると思います。ぜひ探してみてください。

この十文字の部分は古くから「翼を広げた大きな鳥の姿」に見立てられてきましたが、ちょうど十字架のような形になっていることから、南十字(みなみじゅうじ(サザンクロス))に対して北十字(ノーザンクロス)とも呼ばれています。

はくちょう座は夏の夜空を代表する星座ではあるんですけれども、じつは見えている期間がとても長いんです。同じく夏を代表するさそり座などは、南の空をさっと通り過ぎて、やがてみえなくなってしまいますが、はくちょう座はクリスマスの頃まで見えています。

その頃には、夕方から宵の口にかけての西の空にいて、沈んでいこうとしているところですが、このころのはくちょう座は地平線に立つ大きな十字架のように見えるんです。
これもぜひ覚えておいてくださいね。

ところで、はくちょう座には、望遠鏡か双眼鏡をのぞく機会があったらぜひご覧いただきたい星があるんです。それは、はくちょうのくちばしにあたる星、アルビレオ。

この星、肉眼では一つの星にしか見えませんが、望遠鏡か双眼鏡で見ると、二つの星が寄り添った、二重星であることがわかります。
片方が黄色い星、もう片方が青い星、この二つの星の色のコントラストがとってもきれいなんです。


その美しさは、「北天の宝石」とも呼ばれていて、夜空で最も美しい2重星といわれることがあるくらいです。

Albireo through an 8″ telescope, camera Canon EOS 550D, ISO speed ratings 1600,
exposure time 8 sec. Topoignaz, CC BY-SA 4., via Wikimedia Commons
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Albireo_through_Celestron_C8.jpg

海や山にお出かけの機会があったら、ぜひ、双眼鏡をおもちいただくことをおすすめします。
オペラグラスでもいいんですよ。
日中、遠くの景色を見るのにももちろんいいですし、夜、双眼鏡ごしに星空を見ると、肉眼ではみえない細かい星がいっぱい見えてくるんです。
また、このアルビレオのようにきれいな色をした星を見つけることもできます。
おすすめですよ!

さて、はくちょう座は宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」に、とても印象的な姿で登場します。

ジョバンニとカムパネルラの二人がのった列車は「銀河ステーション」を出発すると、天の川に沿って立つ白い十字架を車窓からみます。
つまりこれが北十字(ノーザンクロス)ですね。
そして「白鳥の停車場」に停まります。
その次に登場するのがアルビレオ。

アルビレオは、天の川の中にある、水の早さをはかる観測所であるとされていて、その美しさはトパーズの黄色とサファイアの青に例えられています。
「銀河鉄道の夜」で「アルビレオ観測所」の登場するくだりはこんなかんじです。

『窓の外の、まるで花火でいっぱいのような、あまの川のまん中に、黒い大きな建物が四棟ばかり立って、その一つの平屋根の上に、眼もさめるような、青宝玉(サファイア)と黄玉(トパース)の大きな二つのすきとおった球が、輪になってしずかにくるくるとまわっていました。』

いかがでしょうか。「北天の宝石」アルビレオ、ホントに、機会がありましたらぜひご覧になっていただきたい星なんです。

ではいつものように、はくちょう座にまつわる物語をご紹介していきます。

タイトルとURLをコピーしました