オリオン座の探し方と神話〜リゲルとベテルギウス(爆発する?)、アルテミスとの恋物語。

今回は、真冬の星空に雄大に輝く狩人、オリオン座についてのお話です。

オリオン座は、数ある星座の中でももっともなじみ深い星座のひとつではないでしょうか。
とても明るくて華やかで、均整がとれた星座です。
等間隔に並んだ三つの星(オリオンの三つ星)、そして、それを取り囲む4つの明るい星。
たいへん特徴ある星の並びです。

オリオン座を見るのに、とくに探し方はありません。
冬の夜空を見上げれば、自然に目につく星座です。

この明るい7つの星(三つ星と周囲の4個の星で7つですね)は、1等星が2つと2等星5つで構成されています。
本当に明るい星ばかりですから、都市部でもじゅうぶん見ることができます。
空の暗い場所にいくと、この周囲に、棍棒を振りあげている右腕や、獅子の毛皮をかけている左腕の部分も見えてきて、狩人オリオンの雄大な姿が浮かび上がってくるんですよ。

では、明るい二つの1等星から見ていきましょう。
三つ星をとりかこむ四角形の、左上の角と右下の角、対角線上にあるのが1等星です。
左上がベテルギウス、右下がリゲルといいます。
このふたつはとっても対照的な星なんです。

まず、左上のベテルギウス。
オリオンの肩に輝く赤みをおびた1等星です。

ベテルギウスは星の一生の最後の段階を迎えつつある星です。
表面温度はおよそ3千度、これ、ぼくたちの太陽の半分しかないんです。
温度が低いので赤っぽく見えています。
ところが、直径は太陽の700倍から1000倍もあります。
太陽の1000倍といえば大変な大きさです。
ですから、表面温度は太陽の半分しかないのにもかかわらず、全体としては太陽2300個分もの光を放っています。
なので、明るい1等星として輝いて見えているんです。

ハッブル宇宙望遠鏡が撮影したベテルギウス
Hubble space telescope captures first direct image of a star.
Released by NASA and the Space Telescope Science Institute (STScI).

もうひとつの1等星は、四角形の右下、リゲル。
オリオンの左足にあたる星です。

リゲルは、ベテルギウスとは反対に誕生してから数百万年しか経っていない若い星です。
表面温度は1万2千度、太陽の2倍もの高温です。
その高い温度のため白く見えるんですね。そして、直径は太陽の70倍あって、その明るさ、実になんと太陽の3万倍。
リゲルはベテルギウスの2倍ちかくも遠くにあるんです。
それなのにベテルギウスよりも明るく見えているんです。
いかにすさまじい明るさか、わかりますね。

リゲル(ラザフォード天文台の望遠鏡による画像)
Rigel, As viewed from the Rutherfurd Observatory in midnight, the picture was processed through a telescope. Haktarfone at English Wikipedia, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

ちなみに「ベテルギウスがもうすぐ爆発して、太陽と同じ程度の明るさを放つ」というような情報がネットを賑わせたことがありました。

とりあえず「太陽と同程度の明るさを放つ」というのは間違いです。
こうした巨大な星の最期の爆発を、スーパーノヴァ(超新星)といいますが、ベテルギウスがスーパーノヴァを起こした場合の明るさは「昼間でも見えるだろう」とされていてはいますが、とうてい太陽なみの明るさにはなりません。
でも、それでも、日中でも見えるとなればかなりものですよね。

となると、気になるのは「もうすぐ」とはいつなのか、です。

ベテルギウスが不安定な状態にあることを示す観測も公開されていますし、一生の最後の段階を迎えつつあるのも間違いありません。
「近い将来」爆発するだろうと言われていたのも本当です。

ベテルギウスの明るさと形状が不安定なようす
(ヨーロッパ南天天文台撮影)
The observations, taken with the SPHERE instrument on ESO’s Very Large Telescope in January and December 2019, by ESO/M. Montargès et al., CC BY 4.0 , via Wikimedia Commons

ただし、天文学的な尺度での「近い将来」です。
だから、今夜爆発する可能性もゼロとはいえないけれど、もしかしたら数千年後、数万年後、いや100万年後なのかもしれない…なんてふうに言われていました。

ですが、最新の研究によれば、どうやら大爆発は10万年以上先のことになりそう、とのことです。

とはいえ、また新たな兆候が発見される可能性もゼロとは言えません。
ですから、ベテルギウスに関する情報、今後も要チェックですね。

つぎに、中心に3つ並んだ三つ星をみてみましょう。
ここはオリオンが腰に締めているベルトにあたります。

ひとつおぼえておくと便利な情報があります。
三つ星のうち、むかって右側の星、「ミンタカ」という名前がついていますが、この星は、きっちり真東から昇って真西へ沈むんです。
あまり高い所に昇っているときはちょっとわかりにくいですが、低い位置にいるときなら、方角を知るのに役立ちますよ。

さて、この三つ星のすこし下に、もう少し小さな3つの星が縦に3つ並んでいます。
これを「小3つ星」といいまして、オリオンがベルトに吊るしている短剣に当たる部分です。
この「オリオンの剣」をよく見てみると、真ん中の星が、ぼんやりにじんだように見えます。
これ、じつは星じゃないんです。

これは「オリオン大星雲」といって、宇宙にひろがるガスやチリのかたまりなんです。
このガスの中では、たくさんの新しい星が誕まれていて、その新しい星の光で、ガスが光っているように見えるんです。
そして、これを天体望遠鏡で見ると、まるで鳥が羽を広げたような迫力のある姿をしていて実に美しいんです。

オリオン大星雲
M42 nebula by Ole Nielsen, CC BY-SA 2.5, via Wikimedia Commons

天文写真ではきれいなピンク色をしていますが、これは写真に撮るとき色が見えてくるためで、望遠鏡でリアルタイムに眺めると、真っ白に見えて、文字通り「星の雲」なんです。

晴れた夜には、オリオンの剣、小三ツ星、ぜひ探してみて下さい。
もしも、双眼鏡…小型のオペラグラスでもいいんです、お持ちでしたらぜひこの部分を見てみてください。
天文写真のようには見えませんが「星ではなくて小さな光る雲なんだ」ということがわかりますよ。

 

また、できうれば…望遠鏡で見ていただく機会があればなあとホントに思います。
天文台の星空観望会などもおすすめです。
感動しますよ。機会がありましたらぜひ!です。

では、いつものようにオリオン座にまつわる物語についてお話していきます。

タイトルとURLをコピーしました