木星〜太陽系最大の惑星・ゼウスの星〜ゼウスの神話

さて、ギリシャ神話におけるゼウスの物語は大きく2つに分けて考えることができます。
ひとつは、ゼウスが神々の王となるまでの物語、そして、もうひとつは、王座についたのちの数々のエピソードです。

神々の王になってからのゼウスは、これはも皆さんよくご存知の、とんでもない浮気者、というキャラです。彼が愛人にした女性はもう数えあげればキリがありません。

ただ、ちょっぴり擁護しますと、これは、ギリシャおよびその周辺のさまざまな民族が古くから持っていた土着の神話が、ひとつの大きな物語に統合されていったため、と解釈されているようです。

つまり、ある民族の間で信仰されていた女神や妖精が、ゼウスと関係を持つことによって、その土着神話がギリシャ神話の中に取り込まれていく、あるいは、ある土地の民族が、自分たちの起源がゼウスであるということにするため、自分たちがもともと持っていた神話のなかにゼウスを登場させていった、ということのようなんです。

まあ、ということであるならば、ゼウスの浮気性はギリシャ神話体系の成立に大いに役立った、といえるのかもしれませんね。

では、ゼウスが神々の王となるまでをみてみましょう。

ゼウスは世界の支配者であったティターン一族のクロノスという神の末っ子として生まれました。クロノスは、自分の父親を追放して支配者となった神でしたが、つねにひとつの予言におびえていました。
それは、「お前は父親を倒して王座を奪い取った。やがてお前自身も同じ運命をたどるであろう」というものでした。
そこでクロノスは、生まれてくる子供たちを次々に飲み込んでしまったんです。

これを不満に思ったお妃は、ゼウスを産んだとき、ゼウスの代わりに大きな石を産着にくるんでクロノスに渡しました。
こうして生き延びたゼウスはこっそりとクレタ島で育てられます。このときゼウスを育てた乳母が、前半でお話したアマルティーアなんですね。

やがて成長したゼウスはクロノス率いるティターン一族を倒すために立ち上がります。

彼はまずクロノスの背後にしのびよって、思いっきり背中をつきとばします。するとクロノスの口からまず大きな石が飛びだし、ついで、飲みこまれていたゼウスの兄や姉たちが次々と飛び出しました。
ゼウスはこの兄姉たちを率いてティターン一族に挑みます。

クロノス側も手強く、この戦いは十年続いたと言われますが、死闘の末ようやくゼウスたちはクロノスを倒します。
こうしてゼウスは神々の王となり、オリンポスのあるじとなったのでした。

ですが、まだ戦いは終わりませんでした。
ゼウスたちがティターン一族を倒したことにたいして、ティターン一族の母親でありゼウスの祖母にあたる、大地の女神ガイアが腹を立てたんです。

ガイアはまず巨人族ギガンテスをさしむけます。
その凄まじい強さになかなか勝利できないゼウス、「人間の力を借りれば勝つことができる」との神託を受けて、人間の女性とのあいだにヘラクレスをもうけます。
ヘラクレスを味方につけることでゼウスはギガンテスを倒すことができました。

すると今度は、ガイアは恐ろしい魔神テュフォーンを産み落として、最後の戦いを挑んできます。
あの、神々の宴会に乱入してきた怪物ですね。
激しい闘いの末、ゼウスはテュフォーンを火山の下敷きにして封印することで勝利を得ます。
こうした戦いを経て、ようやく、ゼウスの王座は安泰になりました。

このような物語のなかで語られるゼウスは、神々を率いて、雷の矢を武器に戦う、ひじょうに勇敢な姿に描かれているんです。
後のエピソードのような浮気者キャラとはちょっと違う。このあたりも興味深いですね。

さて、ゼウスについて、ぼくのちょっと好きなエピソードを最後にご紹介します。

ゼウスのお后ヘラは、結婚を司る女神でもあります。
彼女はゼウスただ一人を愛する貞淑な妻でした。王座に就いた後のゼウスはなんどもお話しているようにひどい浮気ものでしたが、いくらゼウスが浮気を繰り返しても、二人が別れることはありませんでした。

ですが、ある時のこと。彼女は、ついにゼウスの浮気に愛想が尽きたのか、オリンポスから家出をしてしまうんです。
これに困ったゼウスは、なんとか彼女を呼び戻そうと一計を案じました。

ゼウスは、家出したヘラの代わりに新しいお妃を迎えるというお触れを出します。
その話はどんどん広まり、ヘラの耳にも届きました。

やがて結婚式の当日、怒りと嫉妬にかられたヘラは、結婚式場に向かう花嫁の行列に乱入するや、夫の新しい妻の顔を見てやろうと、そのベールを引きはがしました。

すると…ベールの下から現れたのは、なんと、花嫁の格好をしたゼウス本人だったのです。
お触れも結婚式も、全てはヘラを呼び戻すためにゼウスが仕組んだお芝居だったというわけです。

このお話には「木の人形に花嫁衣装を着せてその人形と盛大に結婚式を挙げてヘラを誘い出した」というバージョンがあって、そちらのほうがポピュラーなのですが、花嫁衣装を着込んだゼウス、という、こっちのお話のほうが、絵的にもぼくは好きなんですが、いかがでしょう。

そんなお話を思い浮かべながら、晴れた夜には、夜空をみあげてみませんか。

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