こと座〜探し方と神話:オルフェウスの竪琴

今日は「こと座」についてのお話です。

こと座はとても小さな星座なんですが、なにしろ今の季節、いちばん目立つ星を含んだ星座ですから、見つけるのはとっても簡単です。
ただ、例によって、市街地など夜空の明るい場所では、全体像まではよく見えないかもしれません。ホントに残念なんですけどね。

ともあれ、こと座をさがしていきましょう。

この時期、夜空を見上げると、頭上高くにひときわ明るく輝いている星があります。
これがこと座の「ベガ」という星。七夕の織り姫が、このベガでしたよね。

ベガは、例えば今夜の8時頃でしたら、ほぼジャスト真上(ほんの少しずれてるだけ)で輝いています。
ですから今の時期、とにかく真上を見上げて、一番明るい星、それがベガです。
純白に輝く織り姫の星、すぐみつかると思います。

ベガは本当に明るい星で、全天で第5位の明るさを持っています。
天高く燦々と輝くその姿は、ヨーロッパでは「真夏の王女」とも呼ばれたり、「真夏のダイヤモンド」といわれたりもしています。
「真夏の王女」という言い方、織り姫と同じように女性に例えられているところが共通していて興味深いですよね。

そして、ベガは夏の夜空で常に目立っている「夏の大三角」を形作る星でもあります。
いま、真南をむいて頭上を見上げたとすると、ベガの左斜め下、ここが長い角になっています、ここにあるのが、わし座の一等星アルタイル、七夕の彦星でした。

そして左斜め上にあるのが、先週お話しした、はくちょう座の一等星デネブです。

ベガ、アルタイル、デネブ、このみっつの明るい星がえがく大きな三角形、これが夏の大三角。夏のあいだ一晩中見えている、空の目印になる三角形です。

そして、本当は、この三角形の中を、天の川が流れているんです。

が、これは空のかなり暗いところでないと見ることは難しく、市街地はもちろんのこと、住宅地レベルの夜空でも見ることができません。
海や山などにお出かけになる機会がありましたら、夏の大三角の中を流れる天の川、ぜひご覧になってください。

さて、話をこと座に戻しまして、ベガが見つかりましたらば、その周囲の細かい星を探していきます。


ここから先は、空が澄んでいないと分かりにくいかもしれませんが、まず、ベガのすぐそばに、ベガとあわせて「くの字型」を形づくるような位置に星が二つあります。
これ、ほんとにすぐそば、小さな小さな「くの字型」です。

さらに、この小さな「くの字型」からアルタイルの方に向かって、4個の星がちょっとほそ長い平行四辺形に並んています。
ざっくり言って、細ながい平行四辺形に小さなくの字型がくっついている、こと座はそんな形の星座です。

Lyra-01
←こと座の探し方
(gifアニメーション)クリックで拡大します。

星座が描かれている古い絵を見ますと、たいていの場合、こと座は、アルファベットのUの字に似た形をした小さな西洋風の竪琴として描かれていまして、ベガはその竪琴に飾られた宝石とされています。

ただ、いまご説明したような星を結んだ線からこういうかたちを連想するのは、正直なところ難しいです。
そこで、ぼくが個人的におすすめしたい、こういう説があります。

当時の竪琴には、ウミガメの甲羅で作った胴体、つまり共鳴させるためのボディがついていたと。
で、こと座はこれを横から見た形なのだ、というんです。
馴染みのある楽器に強いて例えるなら、ネックがものすごく短いウクレレを横からみたようなかたち、とでもいいましょうか。

これ、そう思って見るとなんとなくその形がイメージできるんですよ。

この見方はあんまり有力な解釈とはいいがたいようではありますが、そんなふうに見てみるのもオススメです。

それから、こと座には、とても有名な天体があるんです。
M57といいまして、通称「リング星雲」もしくは「ドーナツ星雲」。
煙の輪のような、もしくは穴の空いたドーナッツのような形をしていて、星の図鑑などでは必ずといっていいほど写真が載っている天体です。
カラフルなリング状になっている写真、ご覧になったことあるんじゃないでしょうか。

この輪は、小型の望遠鏡でも見ることができます。ただ、キレイに色がついて見えるのは写真に撮った場合でして、望遠鏡でのぞいてた場合には、真っ白にぽかんと浮かんだ、ほんとに煙のワッカみたいにみえるんですよ。
「リング星雲」「ドーナツ星雲」で検索すると画像が沢山みつかりますからご覧になってみて下さい。
天文台などに行かれる機会がありましたら、ぜひ望遠鏡で実際にご覧になってみていただきたい天体のひとつです。

冒頭にお話ししたように、こと座は小さな星座です。
どのくらいのサイズかというと、腕をいっぱいに伸ばして持った名刺に隠れてしまうほどなんですよ。
小さいけど、明るいベガがあるおかげでよく目立つ星座です。天の川のほとりにかかる竪琴、ぜひさがしてみませんか。

ではいつものように、こと座にまつわる物語をご紹介していきます。
さて、こと座にまつわる物語。
これはたいへん有名なお話なんですが、ギリシャ神話に登場する「オルフェウスの竪琴」の物語です。

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