ペルセウス座の探しかたと、英雄ペルセウスの生涯

ギリシャ神話の英雄ペルセウス。
「ケフェウス座・カシオペア座」の回に、とても有名な、怪物の生贄にされかけたアンドロメダ姫を救ったお話をご紹介しました。
とても有名なエピソードですが、でもじつは、ペルセウス自身の物語はもっとずっと長くて、アンドロメダ姫の物語はエピソードのひとつなんです。

ペルセウスは、ギリシア南部にあったアルゴスという国の王女、ダナエの息子です。
父親は、というと…これが例によって神々の王ゼウスなんです。
ペルセウス誕生のいきさつはこんなお話です。

ダナエの父親であるアルゴス王アクリシウスは、あるとき不吉な予言を受けます。それは
「お前の娘ダナエーには男の子がひとりできる。その子はやがてお前を殺すことになるだろう」
というものでした。
いつか孫に殺される、と予言されたアクリシウスは、何としても孫を作ってなるものかとダナエを高い塔の最上階に閉じ込めてしまいます。
こうすれば、たとえどんな男であろうとも近づくことすらできないだろう、というわけで、ようは自分の娘を監禁してしまったんです。
酷い話ではありますが…

これで安心、とアクリシウス王は思ったのですが、このいきさつを天から見ていたのが神々の王ゼウス。
ダナエの美しさに夢中になってしまったゼウスは彼女のもとへ忍ぶため、黄金の雨に変身して、天井の明り取りの窓からダナエの上に降り注ぎました。
こうして、二人の間には男の子が、すなわちペルセウスが生まれました。

レオン・コメール「ダナエと黄金の雨」

レオン・コメール「ダナエと黄金の雨」
Danaë and the Shower of Gold, Léon Comerre, Public domain, via Wikimedia Commons

これを知ったアクリシウス王は激怒して、ダナエと生まれたばかりのペルセウスを箱に閉じ込めて海に流してしまいます。
しかし、ゼウスの加護もあって二人は生きのび、エーゲ海に浮かぶ「セリフォス島」に流れ着きます(これは実在する島なんです)。

やがて、ペルセウスは文武両道に優れた立派な若者に成長します。

ところが今度は、セリフォス島を治める王が、ダナエの美しさに目をつけて結婚を迫ります。
しかし、この王を嫌っていたダナエはいくら迫られても首を縦に振りません。
ダナエのそばには常にペルセウスがいますから、力ずくで、というわけにもいきません。
そこで、島の王は、邪魔なペルセウスをダナエーから遠ざけようと策略をはかります。
その策略にのせられてしまったペルセウス。
怪物メドゥーサの首をとってくるというたいへんな難題に挑むことになってしまいます。

ファルネーゼ杯のメドゥーサの頭部(ナポリ博物館所蔵)

ファルネーゼ杯のメドゥーサの頭部(ナポリ博物館所蔵)
The Miriam and Ira D. Wallach Division of Art, Prints and Photographs: Picture Collection, The New York Public Library. “Tête de Médusa de la coupe Farnèse, au Musée de Naples” The New York Public Library Digital Collections. 1872.


メドゥーサは、髪の毛が全て蛇でできていて、その顔を見た者はすべて石になってしまう怪物です。
この難題に挑むペルセウスに力を貸してくれたのが、知恵の女神アテナと伝令の神ヘルメス、そして精霊たちでした。

ペルセウスはまず、ヘルメスに授けられた翼のあるサンダルを履き、空を飛んでメドゥーサのもとに向かいます。
つぎに、精霊たちが貸してくれた、姿が見えなくなる兜で身を隠します。
そうしておいて、女神アテナに授かった鏡のように磨かれた盾にメドゥーサの姿を映しながら、つまりメドゥーサを直接見ないようにしながら近づきます。
そして、ヘルメスに授かった大鎌でメドゥーサの首を落とし、みごと目的を果たします。

「メドゥーサを倒すペルセウス」

「メドゥーサを倒すペルセウス」
Perseus doodt Medusa, Bernard Picart (atelier van), naar Bernard Picart, 1730, Schenking van een particulier, Public domain, via The Rijksmuseum (the national museum of the Netherlands)

その時,ほとばしる血の中から躍り出たのが天馬ペガサスであったと伝えられます。
そして、ペガサスに乗って島へ戻る途中、海岸で岩に繋がれたアンドロメダ姫を偶然見つけて救うことになるんです。

その有名なエピソードのち、ペルセウスがアンドロメダを連れてセリフォス島へ戻ってみると、島中が騒然としています。
じつは、島の王が、ペルセウスの留守を狙ってダナエを我がものにしようと軍を動員していたんです。

ダナエは神殿に逃げ込んでいて無事でしたが、兵士たちに包囲されて、絶体絶命の状況。
ペルセウスはすぐさま王のもとへ行きこの仕打ちを問いただします。
すると王は「ええい、うるさい!そんなことよりメドゥサの首は取ってきたのか?」と言います。
そこでペルセウスは、「もちろんですとも。これがそうだ!」と言ってメドゥサの首を突きつけました。
たちまち王とその家来たちは石になってしまいました。

冒険を終えたペルセウスは生まれ故郷であるアルゴスへ向けて旅立ちます。
すると、途中の街で大きな競技大会が開かれていました。
こういう大会が大好きなペルセウスは早速エントリーして、円盤投げに参加します。
ところが、ペルセウスの投げた円盤は思わぬ方向へ飛んでいって観客の中の一人の老人に当たってしまい、その老人はそのまま亡くなってしまいます。
実は、この老人こそ、ペルセウスの祖父アルゴスのアクリシウス王だったんです。

ペルセウスの活躍をうわさに聞いた王は、予言を恐れるあまり、宮殿を逃げ出して、この街で群衆に紛れ込んでいたんです。
ですが結局、アクリシウスは予言どおり、孫のペルセウスに殺されてしまったのでした。

事故とはいえ、自らの手で祖父を殺してしまったペルセウスは嘆き悲しみましたが、どうにもなりません。
祖父の跡を継いでアルゴスの国王の座につき、善政を敷いて国民から慕われました。

やがて、ペルセウスが亡くなった後、ゼウスはその偉業を称えるため、彼とアンドロメダを天に迎えました。
こうしてペルセウスとアンドロメダは星座になったのだといいます。

というわけで、ペルセウスの物語は波瀾万丈でじつに面白いんです。
とくに印象的なのが物語の冒頭、黄金の雨に変身したゼウスがダナエのもとへ忍ぶ、というところなんですよね。
なんとも幻想的なシーンで古来さまざまな絵画に描かれてきた場面でもあります。
なかでもクリムトが描い作品が有名ですね。

クリムト「ダナエ」

クリムト「ダナエ」
Danae, Gustav Klimt, Public domain, via Wikimedia Commons

塔の上に閉じ込められた美女のもとへ降り注ぐ、黄金の雨。
その結果生まれた、英雄ペルセウス。

いかがでしょう。
そんなお話を思い浮かべながら、晴れた夜には、星をみあげてみませんか。

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