嫦娥3号月面着陸&かぐやデータ月面立体地図作成にちなんで、月のお話〜「月の謎」と「嫦娥伝説」

さて、「嫦娥伝説」についてです。
嫦娥は月に住んでいるという女性です。おみやげの月餅のパッケージなどによく描かれていていて、中国の人なら誰でも知っている伝説なんだそうですよ。

では、なぜ彼女は月で暮らすようになったのか。このいきさつのことを「嫦娥奔月(嫦娥月に走る)」といいますが、様々な民間伝承や古典文献があって、いろいろなパターンがあるのだそうです。

以前、中秋の名月のときに、お月見の風習の元になったと伝えられる、ちょっと悲劇的なストーリーをご紹介しました。
そこで今日は、もう一つのストーリーをご紹介します。

むかしむかし。伝説の中国の王国、夏の時代であったともいいますが、地上をおそろしい災厄が襲ったことがありました。人々を苦しみから救うため、天上界から羿(ゲイ)と嫦娥という夫婦が降りてきました。羿の奮迅の働きにより災厄は退けられ、地上に平和が訪れました。

人々から敬われた夫婦でしたが、じつはひとつ、悩みがありました。天上界の住人として不老不死だった羿と嫦娥は、地上に降りたことで人間に変じ、そのため、「死」からのがれることができなくなってしまったのです。

年老いたり死んだりせずにすむ方法はないだろうかと悩む羿のもとに、はるか西の国に不老不死の薬を持つ仙人がいるらしい、という噂が届きます。さっそく、羿は旅立ち、西へ西へ進みました。

たどりついた羿に、仙人はこう言いました。 「待っておったぞ。この薬はそなたたちのために用意しておいたもの。ささ、持ち帰って二人で分けて飲むがよい。さすれば、望みどおり、もはや歳もとらず、死ぬこともない。この地上でいつまでも幸せに暮らすがよい」
「では、もしも一人で飲むとどうなるのですか?」と尋ねると、答えはこうでした。 「一人で全部飲むとか?そうすれば、不老不死を取り戻すだけでなく、天上界へ戻ることもできるのじゃ。もちろん、一人は地上に残して、じゃがの…」

彼は薬をありがたくいただくと、いそいで家へ帰り、嫦娥にこのことを話しました。そして、良い日取りを選んで2人で飲もうと決めます。しかし、嫦娥は腹の底で違うことを考えていたんです。
「天上界が懐かしい、昔の生活に戻りたい…」
じつは彼女は、夫の仕事についてきたばかりに人間になってしまったことを、ずっと不満に思っていたのです。

羿が狩りに出かけた、ある月の明るい晩のこと。嫦娥は「今こそ絶好の機会」と、仙薬を一気に飲み干してしまいます。たちまち嫦娥の身体は空に舞いあがり、中空に輝く満月の中へ消えていきました。

羿が狩りから帰ってみると、妻の姿はどこにもなく、空になった仙薬の瓢が転がっているばかり。 彼はあわてて屋外に飛び出し、妻を探し回りましたが、どうしても見つかりません。 探し疲れた羿が月を見上げると、月の表面に不思議な模様が現れていました。 じつはこの月面の模様は、ヒキガエルの姿になってしまった嫦娥の姿だったのです。

なぜ嫦娥はそんな姿になったのか。じつは、羿に薬をあたえた仙人は、仙女たちをすべる西王母の化身だったのです。西王母は嫦娥の夫への裏切りを見逃しませんでした。嫦娥はその報いとして、醜いヒキガエルの姿に変えられ、月面に封じ込められてしまったのです。

そのまま、いまでも月面に暮らしているという嫦娥。たぐいまれな美女であった妻の変わり果てた姿に、羿は何を思ったでしょうか。

ちなみに、月面の模様を大きなカエルに見立てるのは中国では古くから一般的だそうです。
どんなふうに見立てるか、諸説あるんですが、ぼくがなるほどと思ったのが、黒い部分じゃなく白い部分を、上から見たヒキガエルの上半身と見る、という説。
白い部分をじっと見ていると、頭からお腹ぐらいにかけてが、月面の3分の1ぐらいを覆うようにぺったり張り付いている巨大なヒキガエルの姿、見えてきますよ。

いかがでしょう。そんなことを思い浮かべながら、晴れた夜には、月をみあげてみませんか。

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