「はやぶさ2」の旅立ち〜小惑星とはなにか〜日本の神話から「オオクニヌシとスサノヲの物語」

さて、有名な「ヤマタノオロチ退治」ご存知に琴と思います
。この時、スサノヲは、生贄にされかかっていた美しい少女クシナダヒメを櫛に変えて髪に挿してオロチと闘ったのですが、その後、クシナダヒメを妻として、根の国というところに行き、そこで暮らします。

根の国とはつまり地底の死者の国です。黄泉の国ともいいますね。
何故スサノヲはそんなところに行ったかというと、ここは彼の母であるイザナミがいる場所だったからということのようです。

そのスサノヲを訪ねて来たのがオオクニヌシ、なんですが、まだこの時点ではこの呼び名はなくて、オオナムチと言いました。
これまた有名な「因幡の白兎」の物語。あのうさぎをを助けたあと、オオナムチは兄弟たちに迫害されるんです。

これは、兄弟たちが求婚しようとしていた美女、因幡のヤガミヒメが、兄弟たちには目もくれずオオナムチを選んだから、というのが理由だったんですが、とにかくひどいもので、たとえば、「人々を困らせる赤い猪を退治しよう」と持ちかけて、「おれたちが山から追い出すから、お前は下で捕まえろ」と命じておいて、真っ赤に焼いた岩を転がり落とす。こんなものを受け止めた日にはひとたまりもありません。

あるいは、「大木を切り倒し、その木にくさびを打ち込み、オオナムチをその割れ目に入らせておいてくさびを引き抜く」なんてこともされます。
このままでは滅ぼされてしまう、兄弟たちの手から逃れるためにスサノヲを頼るといい、と母親から助言をうけて、オオナムチは根の国へやってきました。

まず彼を出迎えたのが、スサノヲの娘であるスセリビメ。姫はオオナムチをひと目みるなり恋に落ち、その場で深い関係になってしまいます。
古代はそのへん話しが早いんですね。

で、館に帰ったスセリビメはお父さんのスサノヲに、「とても立派でステキな神様がいらっしゃたわ」と伝えます。
スサノヲは館から出てきて、オオナムチをじろり、と見るや「どこが立派だ、こんな奴はアシハラシコオというのだ」と言います。

アシハラ、というのは根の国にたいして地上の、と言った意味、シコオとは醜い男と書きます。醜い女と書いたらシコメと読む、あのシコです。 ようするに、父親としては、娘が心弾ませて連れてきた男なんか、まずそもそも気に食わない、というわけです。

スサノヲはオオナムチを蛇のいる部屋や蜂とムカデのいる部屋で寝るよう命じます。ここで彼を救ったのがスセリ姫で、彼女は魔除けの力がある「比礼(ヒレ)」…今で言えばスカーフのようなものですね、これをオオナムチに与えて、オオナムチはおかげで難を逃れました。

しぶといやつだ、というので、スサノヲは今度はオオナムチを草原に連れていくと、鏑矢という、これは射ると音が鳴る、信号弾のような矢ですが、これを力いっぱい放って、「拾って来い」と命じます。

オオナムチが草原の中に落ちた矢を捜しに行きますと、スサノヲは草原に火を放ちます。たちまち四方を火に囲まれたオオナムチ、絶体絶命の危機でしたが、そこにあらられたネズミにヒントをもらって、地中にあいた穴になかに隠れます。
やがて火が上を通りすぎると、ネズミが矢をくわえてきてくれ、おかげでこの場も助かりました。

焼け死んだはずのオオナムチが戻ってきたのを見ると、スサノヲはかれを大広間に呼び入れて「髪のなかのシラミを取ってくれ」と言います。
オオナムチが覗き込むと、スサノヲの髪の中にはムカデがうじゃうじゃ。そこへスセリ姫が現れて、椋(むく)の実と赤土をわたしました。

オオナムチは椋の実を噛み砕いて音を立て、赤土を口に含んで吐き出しました。これがスサノヲには、オオナムチがムカデを噛みつぶしてはペッ、と吐き出してるかのように見えたんです。

スサノヲは、「なかなか可愛い、見どころのある奴ではないか」と思いながら、そのまま眠り込んでしまいます。オオナムチはこの機を逃さず、眠るスサノヲの髪を部屋の柱に結びつけ、大きな石で部屋の入口を塞ぐと、スセリビメを背負い、スサノヲの大刀と弓矢、ついでにスセリビメの琴まで持って、一目散に逃げ出します。

ところが、その琴が木の枝に触れて、じゃらん!と大きな音をたてます、その音で目を覚ましたスサノヲ、「おのれ、ワシが寝ている隙に!」と立ち上がります。
髪を結ばれた柱とともに部屋ごと引き倒してしまうんですが、髪をほどくのに手間取ります。
スサノヲが根の国の出口である黄泉比良坂(よもつひらさか)まで来た時、二人はすでに遙か彼方でした。

ここに至って、スサノヲは、あの男に娘を委ねよう、と思ったんでしょうね、大声でオオナムチに告げます。

「その大刀と弓矢で兄弟たちを追い払え。そしてお前はオオクニヌシとなってスセリ姫を妻として、宇迦(うか)の山の麓に立派な宮殿を建てて暮らせ。この野郎め!」と…

(古事記には、ほんとに「この野郎め!」という意味の言葉…モチロン現代語とは違いますが…が書いてあるんですよ)

この時からオオナムチは、オオクニヌシ『大きい国の主』すなわち出雲の国の王となり、国土開拓につとめていくことになります。

というわけで…古代の神話ではあるんですが、なんだか現代にも通じる心理表現だなあという気がします。
大昔の人々も、今を生きるぼくたちも、そんなにひどく変わってはいない、つながってるんだなあ、と、ぼくはこのエピソードにふれるたびに思います。 いかがでしょう。

そんな物語を、そして、6年後、2020年の「はやぶさ2」の帰還に思いを馳せながら、晴れた夜には、星をみあげてみませんか。

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