Just another MC life
【2014年4月3日(木)放送分より】
さて、季節は春本番、星空のほうも、冬の星座たちに変わって春の星座たちが主役になってきています。
新年度にあせわて、今週からは、春の星座についてお話していきます。
一般に春の星座とされるなかで一番早く夜空にあらわれる星座、トップバッターといいましょうか、それが、かに座です。
春の星座のトップバッターではあるんですが、実はかに座というのは名前が知られている割には目立たなくて探しにくい星座です。
普通の夜空では、その存在をつかむことさえも難しいと思います。
でも「かに座があるはずの場所」の見当をつけるのはさほど難しくないんです。
ですので、よかったら、まず、あの辺がかに座なんだな、ということを今日は覚えておいていただいて、でもって、星のきれいな場所においでの機会がありましたときには、ぜひ探してみてください。
かに座は、今、夜の8時ごろ、真南の空、高いところに来ています。
手がかりになるのは、ふたご座の一等星ポルックスとしし座の一等星レグルスという二つの明るい星。かに座はこの2つの星のほぼ中間にあるんです。
ではまずポルックスを探しましょう。オリオン座の四角形の向かって左上の角の星、ベテルギウスと、オリオンのすぐ左隣にあるこいぬ座のプロキオン、この二つの明るくてわかりやすい星をまず見つけておきます。
オリオン座もこいぬ座も、ずいぶん西に傾いてはいますが、まだ見えていますよ。
そして、ベテルギウスからプロキオンにむかって線を伸ばして、プロキオンのところで直角に上に曲がったところ。ここにある明るい星がポルックスです。
つぎにしし座のレグルスですが、こちらは、ポルックスから左に視線を移していくと、「?マーク」を左右反転にしたような星の並びがあります。
これは「ししの大がま」といいまして、しし座の顔から胸にかけての部分で、春の夜空ではとてもよく目立つ星の並びです。
この「裏返しの?マーク」の“点”に当たる部分、ここにある星がレグルスです。
ポルックスとレグルスが確認できましたら、両者を結んだ線のほぼまんなか、ややポルックスよりのあたり。ここがかに座のある場所です。
とは言いましても、市街地はおろか、住宅地ぐらいの空でも、ここ、たぶん何も見えないと思います。
でも、じゅうぶん暗い場所に行きますと、ここに小さな四角形があるんです。この四角形が蟹の甲羅にあたる部分。
この甲羅の周囲に、広げた足に相当する星が点々とありまして、これでかに座の完成です。
なにぶん4等星と5等星だけで構成されていて、明るい星がありません。
ただでさえちょっとかすんだような春の夜空、暗い場所であっても、くっきりとはわかりづらい星座です。
ですが、かに座というのは非常に古い歴史をもつ星座で、およそ五千年前のバビロニアの書物にもすでに蟹の姿として登場しているほどなんですよ。
←かに座の探し方
(gifアニメーション。クリックで拡大します)
さて、かにの甲羅、小さな四角形が確認できるような条件のよい夜空であれば、この四角形のなかに、ボーッとした光る雲のようなものが見えるはずです。
この天体は「プレセペ星団」といいます。
星団とは、たくさんの星が互いの重力によって集まって集団になっている天体のことで、星々が不規則に集まっているものを散開星団、丸くボールのように集まっているものを球状星団といいます。
プレセペ星団は散開星団で、数百個にもおよぶ星たちがせまい範囲に集まっているんです。
肉眼ではぼんやりとしか見えないんですが、たとえば双眼鏡でのぞいて見ると、星つぶがぎゅっと集まっているようにみえます。
さらに望遠鏡をつかって見てみますと、輝く星々が宝石をちりばめたように見えまして、そのうえ、まるで奥行きがあるように感じられまして、吸い込まれるような美しさなんです。
機会があったらぜひご覧いただきたいです。
このプレセペ星団は、条件がよければ肉眼でもみえることから、古代から知られていた星団の一つです。
大昔はこの星団がかすんでよく見えないときは雨の前兆であるとされた、つまり天気予報に利用されていたともいいます。
ちなみにプレセペという名はラテン語で「飼い葉桶」という意味で、これはプレセペ星団を飼い葉桶に、そして、囲んでいる四角形の星をロバに見立てて、ロバがえさを食べているようすに見立ててつけられた名前なんだそうですよ。
肉眼で見ることのできる星団といいますと、ほかには例えばすばるなどがありますが、このプレセペ星団はすばるに比べますと地球からの距離が遠いんですね、ですから肉眼ではひとつひとつの星まで確認することができません。
ぼんやしりた雲の切れ端のように見えています。
このため、望遠鏡が発明されるまではその正体は謎に包まれていました。たとえば古代中国では、亡くなった人の魂が集まる場所だと考えられていたそうで、つまり人魂というわけですね。
また古代ギリシアのプラトンの一派は人間の魂が天上と地上を往き来するための出入り口だと考えていたそうです。
そして、初めてこの天体が星の集団であることを発見したのは、あのガリレオなんです。
よほど条件のいい夜空でないと見えないのが残念ではあります。
でも、かに座の存在がわかって、プレセペ星団が見えるくらいの場所であれば、きっと空気も美味しいと思いますよ。
ほんと、機会がありましたらぜひご覧になってみてください。
では、いつものようにかに座にまつわる物語についてお話していきます。
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