いよいよ迫ってきた2014年の皆既月食。そこで今日は月食についてのお話です。
さて、皆既月食。じっくりご覧になったことがある、というかた、どのくらいいらっしゃるでしょうか。
月食というと、月が隠れてしまう現象、って思いますよね。それはその通りなんですが、じつは全く見えなくなるわけではありません。
「赤銅色(しゃくどういろ)」といって、赤黒く光る姿が見えます。
この光景はじつに魅力的で、肉眼でじゅうぶん楽しむことができます。
今回の月食は10月8日水曜日の夜6時14分ごろから始まり、満月がゆっくりと欠けていきます。
そして、その1時間と少し後、夜7時24分ごろから、月全体が地球の影に入る「皆既食」の状態になり、およそ1時間の間、赤銅色の丸い月が見えることになるんです。
では、そもそも月食という現象はなんなのか、なぜ起こるのか?から見ていきます。
月食とは、地球の影の中に月が入りこむことによって、月が欠けて見えたり月の色が変化したりする現象です。
地球にも太陽の光による影があって、その影は太陽とは反対の方向に伸びています。
地球の周りを回っている月がこの影の中に入ると、月が暗くなったり、欠けたように見える、これが「月食」です。
ですから月食は、太陽と地球と月が一直線に並ぶとき、つまり、満月のときだけに起こります。
でも、満月はおむねひと月に一回ありますが、満月のたびに月食が起こるわけではありませんよね。
これはなぜかというと、地球が太陽を回る軌道と、月が地球を回る軌道とが、ぴったり同じ角度にはなっておらず、ちょっとズレているからなんです。
これがぴったり同じなら、満月のたびに月食になるはずなんですが、このズレがあるため、たいていの場合、月は地球の影の上か下にずれて、明るい満月になります。
地球の影にちょうど重なるときだけ、月食になるんです。
地球の影の大きさは結構大きくて、月3個分ほどあります。
この影の中に月が全部入ってしまう状態を「皆既食」といいまして、そのような皆既状態が見られる月食を「皆既月食」といいます。
月が地球の影の中心に近いところを通ればるほど、皆既状態が長く続くことになります。今回の月食ではこの状態がおよそ1時間続きます。
また、影の一部だけが月を隠している状態は「部分食」と言うのですが、月食全体を通じて部分食しか見られないケースもけっこうあって、その場合は「部分月食」といいます。
で、皆既食の前後にも部分食が起こっていることになりますよね、すなわち、月が地球の影の中を動いていくにつれて、白い満月から部分食へ、部分食から皆既食へ、そしてまた部分食、白い満月、と変化していきます。
さて、皆既食のときには月全体が地球の影の中に入っているわけですから、月に太陽の光が当たっていません。
であるなら、月は真っ暗になって見えなくなってしまうのではないかと思いますよね。
しかし実際には、最初にお話したとおり、赤銅色、赤黒い色に見えます。これはなぜかというと…
地球のまわりには大気があります。太陽から来た光が大気の中を通過する際、波長の短い「青い光」は空気の分子によって散乱されて、大気をほとんど通過することができません。
これに対して、波長の長い「赤い光」は散乱されにくく、光が弱められながらも大気を通過することができます。
(これは、朝日や夕日が赤く見えるのと同じ理由です。低い位置にある太陽から届く光は、大気の中を長く通過することになるので、赤い光が残るんです)
このことに加えて、大気ぜんたいがレンズのような役割を果たして、太陽光が屈折されて影の内側に入り込みます。
この、かすかな赤い光が月面を照らすことで、月が赤黒く見えるんです。
そして、月食ごとにその明るさや色は異なります。
地球の大気中のちりや水蒸気の量によって、かなり黒っぽく見えることもあれば、明るいオレンジ色のように見えることもあります。
ですから、今回はどんな色で見えるのか、も、ぜひ注目してくださいね。
このあとは、どんなふうに観察するのがおすすめか、など、月食の楽しみ方についてお話していきます。