こいぬ座の探し方と神話〜狩人アクタイオンとアルテミス、そして小さな猟犬メランポス

今日は、華やかな冬の星空にいろどりを添える星座、こいぬ座についてのお話です。

こいぬ座はオリオン座の左側、おおいぬ座の左上に位置する小さな星座です。
この「こいぬ」とは、子どもの犬、という意味ではありません。
「おおいぬ座」に対しての「こいぬ座」ですので、つまり身体の小さい犬、小型の犬種、ということです。
とっても小さな星座ですが、よく目立っていて、見つけるのは簡単ですよ。
手がかりになるのは、明るい一等星「プロキオン」です。

ではこのプロキオンを見つけていきましょう。
まずオリオン座から見ていきます。
オリオンは長方形をしていますが、その上の辺を、左にむかって、やや下にカーブするように伸ばしていきます。
その先に見つかる明るい星がプロキオンです。

プロキオン

あるいは、先週お話ししたシリウス。
オリオンの真ん中にある三ツ星を左に伸ばしたところにある明るい星でしたね。
このシリウスと、オリオン座のむかって左上の角にある1等星ベテルギウス。
この二つの星とともに正三角形をかたちづくるような位置にある明るい星、それがプロキオンです。

この、シリウスとベテルギウスとプロキオンを結んで出来る三角形が「冬の大三角」です。
ほぼ正三角形に近い、とてもととのった三角形なんですよ。

大三角

太陽や月や惑星といった太陽系内の天体を除くと、プロキオンは全天で8番目に明るい星です。
シリウスは一番明るい星、そしてベテルギウスが10番目ですから、なんと、全天でベスト10に入る星たちでこの「冬の大三角」はできているんですね。
本当に目立ちますから、ぜひ探してみて下さい。

さあ、プロキオンがわかりましたら、そのやや右上に、これは市街地ではちょっと難しいかも知れませんが、三等星がひとつ、輝いています。
プロキオンとこの星を結べば、こいぬ座の完成。
つまり、この星座は、二つの星だけでできているんです。
プロキオンがこいぬの胴体、もうひとつの星がこいぬの瞳に当たります。

が、なにしろふたつしか星がありませんから、実際にこいぬの姿を描き出すのは、無理がある話ではあります。
ですが、右下にある「おおいぬ座」つまり大きい犬に対して、こちらは小さい犬なんだと、そう思って眺めてみると、なんとなくそんな感じがしてくるから不思議な星座です。

おおいぬこいぬ

Canis_Minor-01
←こいぬ座の探し方
(gifアニメーション)クリックで拡大します。

このプロキオンという名前は、ギリシャ語で「犬の前に」とか「犬の先がけ」という意味から来ています。
これはこの星が、おおいぬ座の「シリウス」よりもほんの少し先に、東の地平線からのぼってくることからきています。

先週お話しましたように、古代エジプトでは、シリウスが明け方の空にのぼるのを見て、ナイルが氾濫する季節を知りました。
プロキオンは、シリウスを連れてのぼってくる星として大切にされていたんです。

実際に夜空で見ましても、この星はシリウスの弟分みたいな輝きを見せています。
じつは天文学的な星の性質からいってもこのプロキオンはシリウスとよく似た星なんだそう。
シリウスをすこし低温にしたような星、言うなれば「ミニ・シリウス」とでも呼びたくなるような星なんです。

もうひとつ,この星にはかつて「ゴメイサ」という別名がありました。
これはアラビア語で「涙ぐむもの」という意味です。

なぜこう呼ばれたかというと、ひとつには、自分がシリウスより暗いことを嘆いているから、といいます。

また別の説では「冬の天の川」が関係します。
残念なことに現代の日本では、ほとんどの場所で天の川を見ることができなくなっていますが、周りがじゅうぶん暗い場所であれば、夏の天の川のような雄大な姿とは違って、うっすら淡い帯として見えます。
そういう場所で夜空を見上げると、シリウスやオリオンといった賑やかな星たちが天の川の西側にあるのに対して、プロキオンだけが東側にひとり取り残されてしまっているように見えるんです。
それを悲しんでいるからなのだ、とも言います。

冬の天の川

そして、現在、この「ゴメイサ」すなわち「涙ぐむもの」という名前は、こいぬ座の、プロキオンではないほうの星、瞳に当たるほうの星につけられているんです。

ということは、この小さな犬は、涙ぐんでいるんですね。
なぜ泣いているのでしょうか?
では、こいぬ座にまつわる物語をご紹介します。

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